シナリオ小話 第51回 カメラを知る3

シナリオライターの観点から映像化された際のカメラワークについて知ろうという連載も3回目です。

毎度のように申し上げますが、ここでのカメラについての記載はあくまでも「シナリオでどのように書けばどのように映像化される(可能性がある)のか」について知ることによって、シナリオ執筆に活かそうというものであり、専門のカメラワーク解説ではありませんから、特にここで使っている言葉なんかを撮影さんにそのまま話しますと「何を知ったかぶりしてるんだ、全然違うよ」ということになりかねません(笑)ので、ご注意下さいネ♪

さて、以前までにカメラの「ズーム(倍率)」系と「パン(首振り)」系を紹介してきました。
シナリオライターとして知っておかねばならないカメラワークは実はそれほど多くないと考えているおおやぎですから、カメラワークの紹介は今回が最後です。今回はいくらか残りについて考察してみたいと思います。なお「カメラについて知る」は次回も続きます(予告!)。

◆ピントワーク
「ピント」とはカメラの「焦点」を指す言葉です。すでに「焦点距離」と言われるより「ピント」と言われた方が分かり易いかと思います^^
最近ではデジタル合成によって遠景・中景・前景の3つ全てにピントを合わせるような被写界深度がきわめて深い映像も可能となりましたが、一般的に言ってカメラとレンズの原理上、あるものにピントを合わせると距離の異なる他のものからはピントが外れます。このことを前提に説明しますが―――
・ピント合わせ:ある対象からピントの外れた状態から始まり、この対象へピントを合わせていく動きを言います。一般にシナリオ中で「目を凝らすと」と「よく見ると」等のように書くと、このようなカメラワークが用いられますね。言うまでもなく、視聴者に何かを認識させる効果があります。この場面では何に注目するべきなのかも明確で分かりやすい映像だと言えるでしょう。
・ピント外し:上記の「合わせ」と逆のカメラワークですが、シナリオ上の「目を離す」という記述はおおよそパン系で処理されるはずですから、これとはちょっと違います。おおよそ「目がくらむ」「よく見えない」といった演技を補完・解説する映像ではないかと思います。演技主体の視野に入り込むことによってこういうことを表現できるのも映像の最大の特徴の一つですね。
・ピントが合わない:常に対象にピントが合わないような映像を用いることによって「視力が悪い」「目がかすむ」といったことも表現できるのではないかと思います。

・・・このように、一般にシナリオ上では「演技できないものは表現できない」と言われますが、実は映像という観点でカメラワークまでを視野に入れるならば可能なのですね。
やや余談になりますが、カメラを左右に振りながら歩いている人の視野を再現しながら、ピントも合わない、なんて状況になりますと酔っ払って朦朧と歩いている様子だって再現できますね。

◆トラック
カメラを固定しておいて首を振る「パン」の動きとは別に、カメラそのものを動かす技術に「トラック」があります。
ここまで来ると、おおやぎ個人はややシナリオ上の記述との直結に思い至りません(シナリオ上で「~~」と買いたらこう撮る、という直接の関係が希薄)ので、簡単な紹介に留めます。
・追いトラック:「フォロートラック」とも言われますが、演者が移動するのに合わせてそれを追っていくカメラワークです。演者の後ろから一緒に付いていくようなカメラは街頭での取材映像等では非常に多用されます。こうすると視聴者はナレーターさんと一緒に街の中を歩いているような気分になるからですね。これとは別に、横からフォローするものもあります。歩いて行く横顔を捉え続けることができます。
・回りトラック:「回り込み」とも言われますが、対象の周囲をカメラが円形に回りながら、同時に首を対象に向け続けることによって撮影する技法です。よく円形レールの上をカメラ台車が走っているような撮影風景をご覧になるかと思いますがまさにアレです。その他、わざとではありませんが報道映像などで忙しなくインタビュー主体を追っていくと都合上の回りトラックになっているものがあります。回りトラックで撮影した映像では、対象が画面の中心で回転しているように見えますね。この映像では、対象の人物に注目が集まる以上に、背中から正面の顔に回り込むことでより心情や状況を説明したりするのに適しています。ちょっとしたことですが、例えば多数の侍が一同に会するチャンバラ劇の斬り合いシーン等では、主人公を回りトラックすることによって「誰が主人公なのか」が分かる仕組みになっています。

◆クレーンとブーム
「クレーン」も「ブーム」も長い柄を指します。クレーンまたはブームと呼ばれる梯子車のような装置の上にカメラを据えて撮影する技法全体を指し、通常のトラック撮影以上に、上からも映像を捉えたい場合などに用います。言うまでもなく、より複雑な画角での撮影を連続的に行うことができますので、一部のアクション映像に向きます。一般的な心理ドラマにも用いられることがありますし、街の狭い路地(もちろん撮影セットですが)なんかを歩く様子を捉える場合にも用いられますね。
やはりこれについても、シナリオ上で「~~」と書いたからといってクレーン撮影に直結するということはあまり考えられず、むしろシナリオ上で「これを上空から回り込むように撮影して」のように書き込む必要はありませんから注意しましょう^^;

◆その他の最新撮影技術
撮影技術も日進月歩で、日々、新たな撮影技術が開発・工夫されています。
映画「マトリックス」で話題となった「マシンガン撮影」(タイムスライス、バレットタイムとも)は、被写体の周囲に100以上ものたくさんのカメラを設置しておき、一斉に撮影をします。こうするとそれぞれのカメラから微妙に違う画角による映像(写真)が得られるわけですが、これを巧みに編集することにより、クレーンでは到底不可能である複雑なトラック撮影が可能になるものです。
また「特撮」と呼ばれる分野で古くは怪獣映画やSF映画で用いられたミニチュア撮影や特殊合成(クロマキー)等も、一見するとシナリオとは無関係のように思われますが、実は非常に濃密な関係があります。これらの撮影技術があるということを知っていれば(すでにここをご覧の皆さんはご存じでしょうけど^^;)、脚本の中で「まさにダムが決壊する瞬間」とか「堤防が決壊」「消防車が大爆発」「ガスタンクが破裂」「タンカーが港に激突」なんてことが書けるようになるわけです。このことは非常に重要すよ!―――このような撮影技術がない時代の脚本家は誰ひとりとしてこのようなシーンを脚本に書かなかったのですから。

さて、カメラワークについての考察は今回で終わりますが、次回は「カメラ」「撮影技術」からやや話題を拡大して「トランジション」について考えてみたいと思います。トランジション(シーンの切り替え)は実はかなりシナリオライターには縁のある内容です。
今回はこれくらいで♪
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by genmuki | 2008-10-27 18:53 | シナリオ小話
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