シナリオ小話 第61回 擬音

今回は、知り合いの学生さんにご質問を頂きましたので、「擬音」の取り扱いについて考えてみたいと思います。

そもそも結論から言うと、シナリオに擬音を書く機会はありません。音というものは人物の行動や情景から必然的に発するものであって、このことを利用している例は多くありますが、実際の脚本の中に「ドカッ」とか「チュンチュン」といった「擬音」そのものを書き込むことは皆無です。
しかしご質問は、たとえばある鳥の鳴き声を聞いてそこにその種の鳥がいることを察した場面ではどう書くのか?といったことでした。その場合は「○○の鳴き声が聞こえる」とそのまま平たく書いて良いと思います。
その他にも、ミステリー物なんかでは「誰某の足音だけが響く」とか、「何かが床に落下する音を聞いた」と書けば良いかと思います。

「思います」というのは、実はボクも明確な回答を持っていないせいです。
ボクが知る範囲での教本で、音の表現について脚本でどう記すべきかを説いた本をまだ知りません。ですのでここは脚本の本義に戻り、それを読む監督や演者、編集さんや撮影さんや音響さんに物語の中の出来事が伝わるように書けばよろしかろうということです。

もうひとつの側面として、擬音が文字や装飾文字・記号として表現されるマンガや、文字で表現するノベルゲームのような場合、確かに文字で表現するのだから「ドカーン」とか「バシッ」とか文字で書くことはあります。しかし脚本では基本的に文字を画面に出しません。
ですから、脚本家が「ズギャズゥゥン」とか複雑な擬音を脚本に直接書いたとしても、それは最終的に音声さん・音響さんによって処理されるため、その文字表現の正確さは問題になりません。
このことから、音を「擬音」として表現する必要性や厳密性はほとんどないと思って下さい。

「擬音」ではなく実際に「音」としてなら、やはり「○○の音がする」「○○な感じの呻き声が聞こえる」と書いてよいと思われます。よりその音の詳細について脚本家側にイメージがあるならば「大きな音」「重い音」「鈍い音」といった風に修飾しておけば良いのではないでしょうか。
効果音の分野に関しては、音響さんや音声さんがまた独自のプライドを持ってお仕事されている分野なのでそれを尊重するに越したことはありません。その一方で、やはり脚本家として意図するドラマを成立させるのに重要な音なのだという部分ではきちんとそのことを脚本に書くべきです。

以下はひとつの小手先のテクニックとして提案します。
脚本の柱やト書の中に、「広い原っぱ、秋、虫の音、風の音」といった具合に書くとまるで指示書のように見えてしまうので、「虫の音に満たされる秋の原っぱに風が吹き渡る」のように文章として書く。結局は同じ情景について書いているに過ぎないし、音の風景を中心に構成したいという脚本家の気持ちの現れとしてはやや後退してしまいますが、こういったソフトな書き方をしておいてあとはお仲間に読み取って頂こうというのも脚本家らしい気の遣い方ではないでしょうか。
脚本の読み手である各スタッフさんに情景を共有してもらい、音声さんや音響さんにもそのシーンの音をありありと想像して頂くように「音」を処理するのも、ちょっと賢い脚本家の所作かもしれません♪

初出 Mixi 拙連載より 2008.09.04
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by genmuki | 2009-02-12 16:25 | シナリオ小話
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