シナリオ小話 第40回 脚本の書き方(3)

「脚本の書き方」と題して『脚本とは何か』といったことを考察するシリーズの第3回目です。今回は少し具体的な「書き方」に触れてみたいと思います。

まずは「縦書き」と「横書き」の問題。
先日、知人と話している時に質問されたのが、脚本は「縦書き」で書くべきか「横書き」で書くべきかということでした。
最近は99%の脚本がワープロ入出力ですから、縦書きと横書きの変換はかなり容易です。このため、入力は横書き、台本として出力する時には縦書き、というのが多く見受けられます。
「縦書きか横書きか」についてボクの結論を先に言いますと、入力に関しては「どちらでもどうぞ」です。出力(印刷)については俳優さんや監督の希望に従えば良いと思います。
しばしば混同されますが、実際の台本が縦書きであるという理由で、脚本家が縦書き入力をしなければならない、ということはまったく当てはまりません。前述のように、ワープロ使用により入力と出力は分けて考えることができるので、脚本は縦書きで書かれなければならないなんていうことはありません。

脚本家個々人の感覚としても、ネットで少し検索してみると、「縦書き入力すると形容詞が増えて分量が増す」というお声もあり、逆に「横書きだとスラスラ書けるが分量ばかりが増す」というお声もあります。他にも、「縦書き入力するといつものパソコン環境と異なり意識して首を上下するので肩がこる」というお声もあれば、「横書き入力を長く続けると酔う」というお声もある。ボクの知人でも「縦書き以外では脚本を書けない」という方がおり、「横書き入力以外のワープロ入力なんて考えられない」という方もいます。

―――要するに、脚本家だから縦書きで脚本を書かなければならない、とは言えないのです。そもそも外国には縦書きの脚本なんて(ごく一部を除いて)存在しません。
また、しばしば俳優さんたちの間から「縦書きは(目線や首の動きの関係から)台本として適っている」とのお声が聞かれますが、やはりハリウッドの名優たちは横書きの脚本で上手に演じています。やはり、要は慣れ。そして文化だということです。
自分が書き易い環境で書けばよろしいかと思います♪

次に「漢字」と「言葉」の問題。
ト書きではできるだけ平易な言葉を選び、脚本全体では漢字を多用せずに開いた(ひらがな等で表記する)方が良いのか? これは少し昔に脚本を学ぶ学生さんからご質問いただいたことです。
もう毎度のパターンで恐縮なのですが、これについてもボクの意見は「脚本家の個性なのでご自由にどうぞ」です。

確かに撮影現場やアフレコの経験上、俳優さんらから「この漢字は何と読むのですか?」と質問されることはあります。収録前に脚本を読んで来られた俳優さんが、「自宅で調べたけれど分からなかったんです。収録前にこの言葉の意味だけ教えて下さい!」と駆け込んで来られることもあります。
こういうことがあっても、おおよその場合、問題は容易に解決します。辞書をひけば良いし、周囲の人に尋ねたり、収録の際に監督や仲間に確認すれば済みます。ですから、脚本家があまり意識する必要はないと思っています。

ただ、言葉の表現にはそれぞれに「空気」「ニュアンス」があり、脚本においてはこのことの方がずっと大切です。
セリフについては、この登場人物の人物像に関わることなので、この人物が「慚愧の念に堪えぬ!」と言うか「残念でならない!」と言うかは脚本家にとって大きな問題です。
同様に、ト書きにしても、俳優さんや監督にニュアンスを伝えるという意味合いで考えるなら、「煩悶の表情を浮かべる」と「困った顔をする」の差は大事だと考えるようにして下さい。
情景を描写する記述、「渺茫たる海原、荒波の巷」と書いてあれば、撮影さんや編集さんは否でも応でもこの脚本の目指す世界観を意識するでしょう。「広い海、波が高い」と書けば親切かもしれませんが、より重要なことは、それが脚本家として映像化したいと思った世界観かどうかということなのです。

もちろん、いわゆるワープロ病になって無駄に漢字を書きまくることは読み手にとって不親切ですから、ここは適度に調整したいところです。
大事なのは、脚本だってひとつの創作物であり作品であり、読み手が監督や俳優さんであるというだけであって、そこには作品オリジナルの世界観を持っているべきだということ。
厳密な時代考証とシリアスなドラマを持つ時代劇の脚本で、いかにト書きであるとは言え、「ストレートに進んで」「ここからダッシュ」「勢いよくタックル」「レターケースから取り出し」とカタカナ語が並ぶと何だかうんざりしますよね。
読み手にとって空気感の伝わる「書き方」だって、脚本の作法として少し意識すべきだと覚えて下さい。

今回はこの2点についてボクの意見を書きましたが、次回もこのような素朴な「書き方」について過去のやり取りなんかを思い出したら(笑)書いてみたいと思います。
もちろん、「これについてのおおやぎの意見はどうだ?」というご質問も大歓迎です★
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by genmuki | 2008-06-25 17:34 | シナリオ小話
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