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http://www.nicovideo.jp/watch/sm6113199
たとえばこのような動画を拝見していると、以前に拙連載で『映像脚本における「切り取り」に関しては公正と正確さをもってすべき』と書いた自分がとても恥ずかしいくらい、現在の放送には「切り取り」による技法が取り入れられています。やはり数秒~数十秒のマスコミ映像というものは、形によっては暴力になり得るものであると考えさせられますね^^; ボクなどはおおよそ一日中自宅におりますので、時にNHKさんで放映されているような委員会や議会の中継を拝見しておりますが―――それがニュース番組になった時、述懐の一部だけをも意図的に取り出せば、それは脚本家あるいは構成作家の暴力となり得ると、そのようにいつでも思って頂ければ良いのではないでしょうか。実に淋しいことですが・・・ 「機械と呼ぶのは何だけど、産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人ずつベストを尽くしてもらうようにお願いするしかない」との発言から「女性は産む機械だと発言した」―――あの騒動の時にもありましたが... VTRの世界ではこのような「切り取り」は常に行われていることであると断言します。現場で幾度とそのような機会に接してきましたし、そもそもニュースも映画も時間という枠に制限がありますから、「切り抜き」は必然的な現象ですらあるのです。 たとえば、「決してAばかりが悪いわけじゃないんですが、Aの他にも一因がないかと言われれば否定はできない」との発言があれば、「Aばかりが悪い」と切り取る。これだけではさすがにあざといと思えば、「他にも一因がないかと言われれば否定はできない・・・」と切り抜く。 VTRなんてものは非常に自由に切り抜きできるものでして、編集次第でどうともなるし、そのニュアンスで視聴者にどう思わせるなんて実に簡単なことだ、という論調は・・・自分の仕事の経験の中でも聞いたことのない話ではありません。 あえて実例を言えば・・・ アンケートでもって、こういう設問を作れば非常に容易なわけです。 1.絶対に支持する 2.何が何でも支持する 3.積極的に支持する 4.明確に支持する 5.どちらかと言えば支持しない・わからない こんな5択を並べてみる。 当然、事実よりも圧倒的に「5」へ回答が集まります。そこで、「“支持しない”が80%だ」とブチ上げる。 切り取る側はいかにも強い。それを見るだけの一般視聴者はいかにも弱い。 論文を書き・番組の構成を書き、少なくともマスコミの部分に接した立場であるからハッキリと申し上げますが、これらの切り取りの“正確さ”を念頭にテレビや映画を楽しんで頂きたいと思います。 初出 Mixi 2009.02.13 ▲
by genmuki
| 2009-02-13 16:27
| 幻夢騎
今回は、知り合いの学生さんにご質問を頂きましたので、「擬音」の取り扱いについて考えてみたいと思います。
そもそも結論から言うと、シナリオに擬音を書く機会はありません。音というものは人物の行動や情景から必然的に発するものであって、このことを利用している例は多くありますが、実際の脚本の中に「ドカッ」とか「チュンチュン」といった「擬音」そのものを書き込むことは皆無です。 しかしご質問は、たとえばある鳥の鳴き声を聞いてそこにその種の鳥がいることを察した場面ではどう書くのか?といったことでした。その場合は「○○の鳴き声が聞こえる」とそのまま平たく書いて良いと思います。 その他にも、ミステリー物なんかでは「誰某の足音だけが響く」とか、「何かが床に落下する音を聞いた」と書けば良いかと思います。 「思います」というのは、実はボクも明確な回答を持っていないせいです。 ボクが知る範囲での教本で、音の表現について脚本でどう記すべきかを説いた本をまだ知りません。ですのでここは脚本の本義に戻り、それを読む監督や演者、編集さんや撮影さんや音響さんに物語の中の出来事が伝わるように書けばよろしかろうということです。 もうひとつの側面として、擬音が文字や装飾文字・記号として表現されるマンガや、文字で表現するノベルゲームのような場合、確かに文字で表現するのだから「ドカーン」とか「バシッ」とか文字で書くことはあります。しかし脚本では基本的に文字を画面に出しません。 ですから、脚本家が「ズギャズゥゥン」とか複雑な擬音を脚本に直接書いたとしても、それは最終的に音声さん・音響さんによって処理されるため、その文字表現の正確さは問題になりません。 このことから、音を「擬音」として表現する必要性や厳密性はほとんどないと思って下さい。 「擬音」ではなく実際に「音」としてなら、やはり「○○の音がする」「○○な感じの呻き声が聞こえる」と書いてよいと思われます。よりその音の詳細について脚本家側にイメージがあるならば「大きな音」「重い音」「鈍い音」といった風に修飾しておけば良いのではないでしょうか。 効果音の分野に関しては、音響さんや音声さんがまた独自のプライドを持ってお仕事されている分野なのでそれを尊重するに越したことはありません。その一方で、やはり脚本家として意図するドラマを成立させるのに重要な音なのだという部分ではきちんとそのことを脚本に書くべきです。 以下はひとつの小手先のテクニックとして提案します。 脚本の柱やト書の中に、「広い原っぱ、秋、虫の音、風の音」といった具合に書くとまるで指示書のように見えてしまうので、「虫の音に満たされる秋の原っぱに風が吹き渡る」のように文章として書く。結局は同じ情景について書いているに過ぎないし、音の風景を中心に構成したいという脚本家の気持ちの現れとしてはやや後退してしまいますが、こういったソフトな書き方をしておいてあとはお仲間に読み取って頂こうというのも脚本家らしい気の遣い方ではないでしょうか。 脚本の読み手である各スタッフさんに情景を共有してもらい、音声さんや音響さんにもそのシーンの音をありありと想像して頂くように「音」を処理するのも、ちょっと賢い脚本家の所作かもしれません♪ 初出 Mixi 拙連載より 2008.09.04 ▲
by genmuki
| 2009-02-12 16:25
| シナリオ小話
拙連載「シナリオ小話」も第60回です。
今回60回目は特に記念ということなく、脚本家としての初心に戻って考えてみたいと思います。今回のお題は「文字でしかない」です。ただしかなり精神論でエッセーです^^; さて。言うまでもなく、脚本家の書くシナリオというものはただの「文字」です。しかもそれは何度も申し上げているように、映像のいち素材に過ぎません。 文字を媒体にして脚本や、あるいは小説や漫画を書いておられる方ならすぐに分かる通り、「文字」には音やニュアンスが伝わりにくいという最大の欠点があります。特に方言の表現や、感動詞・間投詞、あるいはそもそもの語勢や語尾の抑揚・大きさ・語気といったものを「文字」に表現するのは不可能です。 そのために我々脚本家は「こら」や「こら!」や「コラ」「こらッ!」「こらあ!」「コラあ」「こらァ」「こら~」「こらーー」と様々に表現してみるわけですが、経験ある脚本家の諸兄ほど、こういった文字表現の工夫すら空しいと思われるのではないかと思います。 やはり原点に戻って考えてみると、脚本・シナリオといったものは題材にしか過ぎず、台本でしかありません。 逆に、是非ともこれからの若い脚本家の方と、あるいはこれを演じる役者・演者の方々にはこのことを分かっておいて頂きたいと思うのです。 ―――どんな脚本も、その文字を書いた脚本家とは別の何者かが読んで理解した上で演じるならば、その言葉は彼(演者)のものである。 ということをです。 残念ながら脚本家は物語を成立させるために題材とその具体的な展開方法を提示しているに過ぎず、舞台に上がることをしません。 (もちろん例外はあり、監督で脚本で主演といったこともあります。もっともその場合でも、1人15役でいることはできませんが) ならば脚本家は、積極的に、役者による「再構成」を期待するべきです。 自分の書いたセリフやト書における一言一言・一挙手一投足が、まさに「文字」で描いたそのままにフィルム上に実現すると考えるのはおこがましいことです。 逆に私などは、『きっとこの辺りのニュアンスは役者さんが趣き深く演じて下さるだろう』と投げてしまうこともしばしばです。・・・だからこそ、ある意味でセリフの内容に困ったら「あ・・」とか「うん・・」とか書きます。実際に皆さんの生活の中で、このように意味のないセリフは多いと思います。「うん」がいくつもの意味をなすことを知っているならば、実にずるい言い方ですが、これを役者に託することができます。 とどのつまり、脚本家の書く物語を無視して舞台や映像を作ることはできないでしょうが、反面、この「文字でしかない」脚本のセリフの内容などは役者によって何とも良いように常に裏切られるものなのです。この覚悟がないのであれば、脚本家などやめるべきです。小説家におなりなさい。もっと言えば、画家になればよいのです。集合芸術の名を冠する映像脚本家でいる必要などありません。 ごく単純に言うなれば―――“誰かが演じるための台本・材料に過ぎないもの”を書くつもりがないなら映像脚本家など目指すべきではありません。 脚本は演じられて初めて日の目を見るものです。誰かが“勝手に”理解して変更し、誰かが常に変容させるものです。きっとそれでは我慢できない方は脚本家と同時に監督や演技指導にまで回るのですが、純粋に脚本家として考えた時、やはり「脚本」は「他人に託すべき素材」に過ぎません。とても残念なことですが、脚本として書いた「文字」などにドラマの「全て」はありません。 脚本家に求められるものは、物語やドラマの全てを把握している全知の知能と同時に、それを他人に託すことができる「寛容性」です。役者さん・演技指導さん・監督・演出さん・編集さん・その他の映像に関わる全てのスタッフに任せる「いい加減さ」であり「謙虚さ」です。 繰り返しになりますが、それができないのであれば脚本家などになるべきではありません。 これとは逆に、自分にはできっこない、演技や編集や音楽や音響や美術、そういったことに心から期待し頼るつもりがあるならば、そういった制作の仲間みんなを巻き込む「最初の一石」となる脚本家はきっと楽しいお仕事です。 初出 Mixi 拙連載より 2008.08.21 P.S. 先日、こちらのブログの方もご覧になっている同輩よりご指摘のメールを頂きましたが... こちらへの「シナリオ小話」連載は、Mixiで連載しているものの転載になりますので、初出より時期的な隔たりがあります。 そのため、Mixi上でのコメントによる間違いの訂正などは修正した上で転載しておりますが、その旨は書いておりません。悪しからずご了承下さい^^; 先だっての連載59回は2008.07.17に初出、50回は2008.05.21に初出の、それぞれの内容を転載しておりますので、Mixi上のメッセージおよびメールでちょうだいしたコメントとご指摘の内容を盛り込んだ内容としてこちらに掲載させて頂きました♪ こちらのブログではコメント不可としてあるのは、Mixiにて掲載後に半年近くの時間があるので一応の・・・無責任宣言ですみませんが、何ヵ所にも転載してありますので管理し切れないからです、すみません><; ▲
by genmuki
| 2009-02-04 05:12
| シナリオ小話
皆さんはアメリカのアメリカンフットボールリーグ最終戦「スーパーボウル」をご覧になりましたでしょうか。
いやはや、今年のスーパーボウルも4thクォーターにドラマがありましたね!!! 今年は贔屓のパトリオッツが決勝に進めずにガックリしつつ、スーパーボウルの劇的な第4thクォーターに涙すら出る想いでした! 大学時代からアメフトを応援している おおやぎ ですが、ちょうどアメフトの大会が開かれる運動公園から徒歩1分、チアや歓声すら聞こえる範囲に住んでいたので、サンダルでペタペタと歩いて・・・・毎週末のように、公園で行われるアメフト、テニス、陸上、はたまた体育館で行われるスカッシュやバドミントンの試合を観戦しに出かけていました。 その中でもアメフトは今だにマイベスト!です♪ ジャンプに「アイシールド21」が連載された時、それがアニメ化された時には、すごく感激したものです★ チームスポーツでありながら、オフェンス(攻撃)とディフェンス(防衛)でメンバーを入れ替え、パスの専門家、キックの専門家、ガードの専門家・・・突っ込み、受け、走り・・・全体を見る戦術家だってチームのディレクターやプランナーとして立派な一員。 アメフトに「縁の下の力持ち」なんていません! 誰ひとり欠けると成り立たないスポーツなんです。 ―――ゲーム制作で言えば、あるいはオーケストラで言えば、よく分かると思います。 原画だけでも成立せず、プランだけでも、プログラムだけでも、CGだけでも、テキストだけでも、何も成立しない世界というものがゲームにはあります。 アメフトを見て、いつもいつもいつも! すごい世界だなと、羨ましい世界だな、と思うのです。 「俺はこれしかできない!」てプロフェッショナルが集う世界、それこそアメフト!! 走るしかできないけど陸上選手以上、キックしかできないけどサッカー選手以上、受けるしかできないけど野球選手以上、そして全体を見渡して戦術を練ることしかできないけれど棋士以上! そんなトップの選手たちが集まってひとつのチームを作るミラクル、それがアメフトにはあるのではないでしょうか♪ スーパーボウル・リアル・チャンピオンとなったスティーラーズにこれ以上ない敬意を表しつつ、我が身をつまされる鳥肌ものの試合に、幾度も乾杯したいものです★ 我々のような先鋭的な職業であるクリエイターの生き方はここに極まれると思わされるビッグゲームに、今後も祝福を!!! ▲
by genmuki
| 2009-02-03 02:41
| 幻夢騎
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